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「移動と定住」 は、taichistereo(入江太一) によって 2001〜2002年に執筆された 卒業論文です(2001年度 東京工芸大学 芸術学部 映像学科賞 受賞)。
大学卒業後は ハードディスクの片隅にひっそりと眠っているだけでしたが、2007年に Nucleus CMS を用いて 改めてコンテンツとして蘇生させることにしました。
本論では、現代の速度技術・速度社会を描写し、<移動>と<定住>の対比を行うことで、これからの社会や個人生活のあり方を模索しようと試みています。
執筆当時の背景として、アメリカ同時多発テロ(2001年9月11日)に至るまでの社会的な動向が存在していました。この時点では誰もあのような事件を予見できませんでしたが、その後もしばらくは何故このような事件が引き起こされるに至ったのか、テロ後の世界がどのようなものになるのか、誰にもまだ判然としない状況でした。言説もまだ十分でなく、消防士たちの勇姿・家族の悲痛ばかりがクローズアップされていました。グローバル化する社会とアメリカという国のあり方について冷静な議論がはじまるのは もう少し時間がたってから、という時期でした。
また、当時学生であった筆者は、学生という身分を盾に ひきこもりを謳歌していました。当時社会的にも大きな注目を集めはじめていた「ひきこもり」が個人的なテーマとして厳とあり、それが本論に少なからず影響を与えています。本論のタイトルでもある<移動>と<定住>は、「ひきこもりでない自由な生活」と「ひきこもりという不自由」にそれぞれ対応する部分があります。
グローバリゼーション・乗り物・速度技術がもたらしたひとつの帰結として、WTCに旅客機が衝突させられるという事態に至りましたが、本論の模索しているもののひとつに「テロが起こらなくても済んだ社会」の姿があります。
またそこには、個人生活のレベルから「ひきこもらなくても済む社会」という姿も投影されています。
このような意味を込めて、「移動と定住 〜速度社会における乗り物の文化とライフスタイルの相関研究〜」という文章は書かれました。
目次
要旨
0.前書き
1.メディアとしての乗り物
1.1.乗り物というメディア
1.2.定住領域の拡大とメディアの外爆発
1.3.船と飛行機
1.4.メディア時代の速度
1.5.管理制御技術
2.失われつつある生活
2.1.アメリカ
2.2.郊外の住環境
2.3.郊外の乗り物
2.4.自動車と定住様式
3.テクノロジー
3.1.あそび
3.2.速度の遊戯
3.3.視聴覚メディアとしての乗り物
3.4.企てと逸脱
4.移動すること
4.1.時間と空間の圧縮
4.2.非-場所
4.3.家
4.4.サイバネーション
注解
参考文献
Links
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