3.2.速度の遊戯
3.テクノロジー
3.2.速度の遊戯

代表的なドライビング・ゲームの一例乗り物による遊戯は、その速度を楽しむものである。乗り物は目的地へ向かう移動の手段であると同時に、乗り物で移動することそのものが目的であるような側面もある。その場合、私たちは速度が引き起こす様々な現象に自己充足的な悦びを感じているのである。
ところで、遊戯者にとっての悦びのほとんどは、過程における経験のなかに現れてくる。ゲームにおいてとにかく失敗さえしなければ面白いというのであれば、世の中には難しいゲームなどというつまらないものはひとつもない、ということになってしまう。
経済における<マネー・ゲーム>やコミュニケーションにおける<言語ゲーム>、あるいは戦争を一種のゲームとして捉えるようなゲーム理論などでも、他者との関係(駆け引き)のなかで自分がどのように振舞ってどのような過程をつむぎ出すのかといったことが行為者の頭を悩ますわけである。思うようにいかない過程をまるまる省略してしまったのでは結果を得ることも出来なくて、与えられた状況やルールに規定されたフィールドのなかで着実に駒を進めていくことが必要なのだ。
その最初期からテレビゲームのひとつのジャンルとして確立されていたドライビング・ゲームは、コンピューターの持つ情報処理能力の向上を示す格好の場として常に注目されてきた。その要諦は、モニターのなかの車を操って、規定のフィールドを思うままに駆けられるというシミュレーション性にある。
ゲームとしての枠組みこそカーレースの形を借りているとは言え、遊戯性というものは結果にすべて還元できるものでないのだから、ドライビング・ゲームが<ゲーム>たるためには、レースよりもまずドライブそのものをシミュレートしたものでなければならないはずだ。あるいは、現実の参照可能性や再現性を標榜しない独自的な遊戯としてならば、ある種の<ドライブ感>を保っているだけでもよい[注8]。
だから、ここで少なくともこう言うことは許されるのではないか。ドライビング・ゲームとは自分の操縦する車体が前進することを楽しむものである、と。こう考えることによって、実際のドライビングと、そのシミュレーションとしてのドライビング・ゲームとを区別していたリアル/バーチャルという差異の問題をいったん取り下げることが出来る。つまり現実にしろシミュレーションにしろ、ドライビングとは<ドライブ感>を楽しむ遊戯である、という単純な事実が明らかになる。
ならば、この意味においては、<遊戯そのものがドライブである>と言うことが出来ないだろうか。つまり過程における前進する意思の積み重ね、それこそが遊戯の本質的な悦びなのだと先に説明した通り、遊戯そのものもまた<ドライブ感>を伴うものではないかと考えられるのである。
ここでいう<ドライブ感>とはすなわち、自らの行為がそのプロセスの中にある速度を生み出しているという実感に他ならない。遊戯そのものが孕んでいる速度の経験が、ドライビングにおいては乗り物の移動する速度として現れることで、遊戯者の知覚にもっとも訴えかけやすい形で提示されているのである。レースという枠組みをとっていなくてもドライビングそれ自体が私たちにとって遊戯となりえる理由はそこにある。
こういった速度の遊戯は、何も常に高速を必要としているわけではない。散歩や旅行も、ある種の遊戯的<ドライブ感>の経験であると言ってもよいだろう。するとここでまた、これらの遊戯的行為のなかに移動することと遊ぶこととを結びつける共通項として、<風景>の存在が浮かび上がってくる。散歩、旅行(観光)、ドライブ、このいずれもにおいて、私たちは速度を経験するだけでなく風景という視覚体験を楽しんでいるはずだ。
3.2.速度の遊戯

代表的なドライビング・ゲームの一例
ところで、遊戯者にとっての悦びのほとんどは、過程における経験のなかに現れてくる。ゲームにおいてとにかく失敗さえしなければ面白いというのであれば、世の中には難しいゲームなどというつまらないものはひとつもない、ということになってしまう。
経済における<マネー・ゲーム>やコミュニケーションにおける<言語ゲーム>、あるいは戦争を一種のゲームとして捉えるようなゲーム理論などでも、他者との関係(駆け引き)のなかで自分がどのように振舞ってどのような過程をつむぎ出すのかといったことが行為者の頭を悩ますわけである。思うようにいかない過程をまるまる省略してしまったのでは結果を得ることも出来なくて、与えられた状況やルールに規定されたフィールドのなかで着実に駒を進めていくことが必要なのだ。
その最初期からテレビゲームのひとつのジャンルとして確立されていたドライビング・ゲームは、コンピューターの持つ情報処理能力の向上を示す格好の場として常に注目されてきた。その要諦は、モニターのなかの車を操って、規定のフィールドを思うままに駆けられるというシミュレーション性にある。
ゲームとしての枠組みこそカーレースの形を借りているとは言え、遊戯性というものは結果にすべて還元できるものでないのだから、ドライビング・ゲームが<ゲーム>たるためには、レースよりもまずドライブそのものをシミュレートしたものでなければならないはずだ。あるいは、現実の参照可能性や再現性を標榜しない独自的な遊戯としてならば、ある種の<ドライブ感>を保っているだけでもよい[注8]。
だから、ここで少なくともこう言うことは許されるのではないか。ドライビング・ゲームとは自分の操縦する車体が前進することを楽しむものである、と。こう考えることによって、実際のドライビングと、そのシミュレーションとしてのドライビング・ゲームとを区別していたリアル/バーチャルという差異の問題をいったん取り下げることが出来る。つまり現実にしろシミュレーションにしろ、ドライビングとは<ドライブ感>を楽しむ遊戯である、という単純な事実が明らかになる。
ならば、この意味においては、<遊戯そのものがドライブである>と言うことが出来ないだろうか。つまり過程における前進する意思の積み重ね、それこそが遊戯の本質的な悦びなのだと先に説明した通り、遊戯そのものもまた<ドライブ感>を伴うものではないかと考えられるのである。
ここでいう<ドライブ感>とはすなわち、自らの行為がそのプロセスの中にある速度を生み出しているという実感に他ならない。遊戯そのものが孕んでいる速度の経験が、ドライビングにおいては乗り物の移動する速度として現れることで、遊戯者の知覚にもっとも訴えかけやすい形で提示されているのである。レースという枠組みをとっていなくてもドライビングそれ自体が私たちにとって遊戯となりえる理由はそこにある。
こういった速度の遊戯は、何も常に高速を必要としているわけではない。散歩や旅行も、ある種の遊戯的<ドライブ感>の経験であると言ってもよいだろう。するとここでまた、これらの遊戯的行為のなかに移動することと遊ぶこととを結びつける共通項として、<風景>の存在が浮かび上がってくる。散歩、旅行(観光)、ドライブ、このいずれもにおいて、私たちは速度を経験するだけでなく風景という視覚体験を楽しんでいるはずだ。
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コメント投稿時のNGワードについてAbout
「移動と定住」 は、taichistereo(入江太一) によって 2001年に執筆された 卒業論文です(学科賞 受賞)。
大学卒業後は ハードディスクの片隅にひっそりと眠っているだけでしたが、2007年に Nucleus CMS を用いて 改めてコンテンツとして蘇生させることにしました。
■ 当時の学籍 ■
東京工芸大学 芸術学部 映像学科
メディア計画研究室
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